SHIN様の全幕内力士寸評

(平成30年夏場所後)


東横綱 鶴竜 力三郎 モンゴル出身 井筒部屋 14勝1敗 優勝D 9点

初めての連覇を目指した場所、4日目に松鳳山に不覚を取り、10日目には好調の元大関琴奨菊に変化で白星を取りに行き、影響が心配されたが、かえってそこからの内容は上昇していった。相変わらず土俵際で回り込む相撲も多いが、精神的にはかなり充実していたのではないか? 14日目に大関確実な栃ノ心に貫禄勝ち、千秋楽には白鵬に勝利し見事連続優勝を達成。

西横綱 白鵬 翔 モンゴル出身 宮城野部屋 11勝4敗 7点

初めての2場所連続休場、更には実父が亡くなったという悲報を経て臨んだ場所だけに、期するものはあったに違いない。横審から苦言を呈された張り手も駆使しながら、形振り構わず勝ちに行く姿勢にその気持ちは表れていた。しかし、6日目は初顔の阿炎に完敗。12日目には過去25戦全勝だった栃ノ心の大関昇進をアシストし、14日目の敗戦で優勝の可能性が消えた。

東横綱A 稀勢の里 寛 茨城県出身 田子ノ浦部屋 全休 0点

春巡業中盤から合流し、夏場所の出場を目指してきたが、今場所もそれは叶わなかった。横審の稽古総見では惨敗を喫し、場所前の稽古でも大関取りの栃ノ心や元大関の琴奨菊に圧倒されてしまったという。初日の番付編成会議の当日まで判断を先送りしたものの、やはり休場を決断せざるを得なかった。7場所連続の休場だが、依然として復調の兆しが見えてこない。

東大関 安 晃 茨城県出身 田子ノ浦部屋 全休 0点

2場所連続で12勝での準優勝、ハイレベルな成績での優勝なら横綱昇進の可能性もあるかと思われたが、春巡業終盤から立て続けにケガに見舞われた。腰痛や右肩痛を抱えながら稽古に励んでいたが、場所前には左上腕も痛めて自身初めての全休となってしまった。ケガを悪化させない上では正しい判断だが、大関昇進後1年間で3回目の休場。ケガしない取り口の会得を。

西大関 豪栄道 豪太郎 大阪府出身 境川部屋 3勝6敗6休 3点

安の休場で一人大関として土俵を務めることになったが、こちらの大関も冴えなかった。連勝スタートを切ったものの、3日目に新三役の遠藤に不覚を取ると、そこから悪い流れを修正できなかった。中日に埼玉栄高の後輩大栄翔に敗れたところで両足首の不調を理由に休場。番付上の大関が全員休場するのは、実に59年ぶりの不名誉な記録。来場所は7回目のカド番だ。

東関脇 栃ノ心 剛史 ジョージア出身 春日野部屋 13勝2敗 敢闘E・技能B 10点

2回目の優勝こそ逃したが、今場所の主役は間違いなくこの人だった。大関取りという大きな目標を前にしても重圧に押し潰されることなく力強い相撲を取り切って連戦連勝。12日目には10年間戦って1勝もしていなかった横綱白鵬にも右四つガップリの大相撲で完勝。賜杯奪還の機運が高まってきた終盤戦の連敗こそもったいなかったが、13勝を挙げて堂々の大関昇進へ。

西関脇 逸ノ城 駿 モンゴル出身 部屋 8勝7敗 5点

およそ3年ぶりに関脇に返り咲いた場所で初日から馬力の相撲で連勝スタート。大関取りの栃ノ心に続けとばかりに相撲内容でもアピール材料十分だったが、5日目に新三役の遠藤との熱戦に敗れるとそこからまさかの4連敗。攻め込まれた時の弱さを露呈した格好だ。それでも14日目には白鵬の優勝の可能性を潰す快勝で、関脇では新関脇だった3年半前以来の勝ち越し。

東小結 御嶽海 久司 長野県出身 出羽海部屋 9勝6敗 7点

1年ぶりに小結に陥落したが、成績以上に相撲内容が光っていた。2日目の白鵬戦は敗れこそしたが、横綱に引かせる場面を作るなど善戦。11日目の鶴竜戦でも一度攻め込まれてから攻め返し、あと一歩というところまで横綱を追い込んだ。三役で初めての2ケタ勝利を狙ったが、14日目の正代戦で右足を負傷。千秋楽は快勝して関脇復帰は確定的だが、影響が懸念される。

西小結 遠藤 聖大 石川県出身 追手風部屋 3勝10敗2休 4点

待望の新三役はほろ苦い場所になってしまった。序盤戦は大関豪栄道に完勝したり、関脇逸ノ城と熱戦の末全勝を止めたりと、三役の実力が身に付きつつあるかと思わせたが、6日目の御嶽海戦で右上腕の肉離れを起こして翌日から休場。一時は手術で長期離脱も取り沙汰されたが、10日目から土俵に復帰。しかし再出場後は白星を挙げられず、新三役場所は3勝止まり。

東前頭筆頭 玉鷲 一朗 モンゴル出身 片男波部屋 8勝7敗 4点

西筆頭で9勝しながら東にスライドしただけという不遇に見舞われ、改めて三役復帰を目指した場所。右足首の状態が思わしくなく、中盤まではなかなか星が挙がらなかった。しかし、終盤戦は前に出る本来の相撲が戻って5連勝で給金直し。本人も反省していたが、勝った相撲は圧勝だったが、負けた相撲では横の動きに対して脆さを露呈した。来場所への大きな宿題だ。

西前頭筆頭 魁聖 一郎 ブラジル出身 友綱部屋 6勝9敗 3点

先場所は初日から9連勝して終盤まで優勝争いに絡む活躍だったが、さすがに横綱・大関が相手となるとそうそう勝たせてはもらえなかった。3日目、4日目と両横綱に挑んだが、対横綱戦32戦全敗という不名誉記録を樹立してしまった。中盤には全勝の正代や好調の小結御嶽海を破ったりという意外性(?)も発揮したが、10日目で丸1年ぶりとなる負け越しが決定した。

東前頭2 松鳳山 裕也 福岡県出身 二所ノ関部屋 8勝7敗 殊勲@ 7点

初日は同期で大関取りに挑んでいる栃ノ心を苦しめるも黒星発進。3連敗の苦しいスタートとなったが、4日目には連覇を目指す横綱鶴竜を会心の相撲で押し倒して5個目の金星を獲得。前半戦は上位との対戦が続いて星は挙がらなかったが、相撲内容は場所を通して敢闘精神を感じさせるものだった。後半戦は白星が積み重なり、自身の勝ち越しと鶴竜の優勝で殊勲賞。

西前頭2 阿炎 政虎 埼玉県出身 山部屋 7勝8敗 7点

上位初挑戦で夏場所を盛り上げた功労者だ。初日から役力士との対戦が続いて力の差を見せ付けられたが、4日目に新三役の遠藤を一方的に突き出して初白星。横綱初挑戦の5日目はかつて付け人として付いていた鶴竜に善戦。6日目は初顔で白鵬に完勝、7日目には豪栄道も連破した。勝ち越せば三賞も目もあるかと思われたが、残念ながら千秋楽に負け越しとなった。

東前頭3 大栄翔 勇人 埼玉県出身 追手風部屋 5勝10敗 3点

丸1年ぶりの上位挑戦の場所、前回と比べれば幾分覇気のある相撲ではあった。3日目の逸ノ城戦では変化から先手を取って物言いにもつれ込むも惜しくも黒星。中日には埼玉栄高の先輩の豪栄道を破って大関戦初勝利を挙げた。しかし、上位との対戦が続いた序盤戦で6連敗のスタート。埼玉の後輩の阿炎に意地を示す相撲もあったが、今場所も2ケタの大敗を喫した。

西前頭3 豊山 亮太 新潟県出身 時津風部屋 2勝13敗 5点

横綱・大関初挑戦でどんな相撲を取るのか注目されたが、力不足を感じさせながらも持てる力を発揮したという印象だった。初日から9連敗とはなったが、両横綱や大関取りの栃ノ心、小結御嶽海といった実力者にも善戦。力の差を実感する2勝に終わりこそしたが、内容的には充実を感じさせてくれた15日間。今場所を経験を糧として、今後の飛躍につなげてもらいたい。

東前頭4 千代大龍 秀政 東京都出身 九重部屋 6勝9敗 5点

三役から陥落した場所の初日は上位初挑戦の豊山を一方的に押し出したが、勢い余ってダメ押し気味の一押しに苦言を呈されてしまった。6日目には大関豪栄道を押し倒し、12日目には小結御嶽海を一方的に突き出した会心の相撲もあったが、中盤の5連敗が響いて6勝止まり。内容は先場所より良かったが、1年近く守った横綱・大関との対戦圏を明け渡すこととなる。

西前頭4 正代 直也 熊本県出身 時津風部屋 9勝6敗 7点

相変わらず相手の当たりを受けてはいるが、そこを耐えてから攻めに転じる相撲に強さが感じられた。受けに自信が付いたのか、今場所は初日から自己新の5連勝の好スタートを切った。中盤は横綱戦も組まれて星は伸びなかったが、13日目は大関昇進へ突き進んでいた栃ノ心に初黒星を付けて勝ち越し決定。翌14日目もライバル御嶽海を破ったが、三役復帰はお預けか?

東前頭5 琴奨菊 和弘 福岡県出身 佐渡ヶ嶽部屋 8勝7敗 7点

元大関が復調の兆しを見せてくれた。立ち合いから一気の出足で圧倒するばかりではなく、攻め込まれても逆襲する相撲も何番かあった。白鵬は琴奨菊との呼吸をずらし、鶴竜に変化を選択させるほど充実していた。手練手管の上位陣には通用しなくとも、上位経験の乏しい最近躍進してきた若手にはまだまだ顔じゃないと言わんばかりの相撲で14日目に勝ち越しを決めた。

西前頭5 勢 翔太 大阪府出身 伊勢ノ海部屋 8勝7敗 7点

先場所初日に痛めた右足裏の状態はまだ万全ではないようだが、勢らしい気風の良い相撲が見られた。鶴竜の土俵入りに帯同できない程状態は悪いようだが、それを攻めの相撲でカバーしようという姿勢が素晴らしい。終盤は両横綱や役力士との対戦が組まれて星が挙がらなかったが、中盤までの貯金が活きて勝ち越し。来場所は1年ぶりの上位総当たりとなりそうだ。

東前頭6 千代翔馬 富士雄 モンゴル出身 九重部屋 6勝9敗 3点

締め込みを青いものに新調して臨んできたが、精彩のない土俵となってしまった。手癖、足癖がある力士ではあるが、どういう相撲を取りたいのかが全く見えてこなかった。右ひじにはサポーターを施していたが、その影響もあったかも知れない。最後の最後で3連勝して6勝まで盛り返したものの、前半戦の6連敗があまりにも痛く、2場所連続の勝ち越しはならず。

西前頭6 宝富士 大輔 青森県出身 伊勢ヶ濱部屋 7勝8敗 5点

上位との対戦圏外に下がった場所、中盤までは実力に見合った星勘定だったが、本来得意なはずの終盤戦で星を稼げなかった。意気の良い若手や好調力士に当てられたこともあるが、あまりにも左四つにこだわり過ぎではないか? 栃ノ心のように攻めながら形を作ることを覚えていかないと厳しいだろう。役力士との対戦がない地位での負け越しは実に4年半ぶりのこと。

東前頭7 竜電 剛至 山梨県出身 高田川部屋 3勝12敗 2点

入幕3場所目も自己最高位を更新したが、さすがに今場所は壁に当たってしまった。先場所も同じような地位で勝ち越しているので、単純に力の差と言い切ることはできないか? 竜電の師匠も「力を付けてきたからこそ当たる壁もある」という内容の発言をしているとのこと。千秋楽は敗れた方が十両落ちという大奄美戦が組まれたが、勝って何とか幕内は死守できそう。

西前頭7 千代丸 一樹 鹿児島県出身 九重部屋 5勝10敗 3点

昨年名古屋場所で幕内に返り咲いて以降、着実に成長を続けてきたが、今場所に関しては期待外れだった。躍進のきっかけになった右四つに自信を持ち過ぎたのか、最初から組みに行く相撲を取ろうとするようになってはいまいか? 相手に圧力を掛けなければ、その後の攻めも活きてこないということを忘れてはならない。もう一度原点に帰って上位再進出を果たしたい。

東前頭8 嘉風 雅継 大分県出身 尾車部屋 8勝7敗 5点

上位と対戦しない番付に下がって2場所目だが、相撲っぷり自体は変わっていない。先場所は体重が増えたことで身上とする動きが鈍っていたが、今場所は今の身体にも多少慣れてきたのではないか? 千秋楽は上位初挑戦で大健闘の阿炎と7勝7敗同士で対戦したが完勝。少し前まで横綱・大関相手に掻き回してきた身としては、そう易々と負けるわけにはいかなかった。

西前頭8 輝 大士 石川県出身 高田川部屋 9勝6敗 6点

昨年後半の3場所を全て負け越したが、幕内中堅で勝ち越せるだけの力は十分に付けてきた。190センチを超える長身だが、背中を丸めて長いリーチを活かして押す相撲が確立されつつある。竜電に部屋頭の座を奪われ、白鷹山が関取に昇進したことで尻に火が点いたのかも知れない。千秋楽は敢闘賞の千代の国に敗れ幕内初の2ケタ勝利はならずも、上位復帰には前進。

東前頭9 大翔丸 翔伍 大阪府出身 追手風部屋 9勝6敗 7点

初日に幕内同士では6戦全敗だった輝を撃破。これで弾みが付いたのか、春場所に続いて好調な前半戦だった。馬力の押しというわけではないが、絶妙なタイミングで相手を崩して自分のペースに持ち込む巧さがこの力士にはある。後半は失速して9勝に留まったが、それでも前頭1ケタ台では初めての勝ち越し。来場所は自己最高位の更新どころか部屋頭の可能性も…。

西前頭9 北勝富士 大輝 埼玉県出身 八角部屋 4勝7敗4休 2点

横綱・大関を次々となで斬りにしてきてからまだ1年も経っていないが、依然として低迷から抜け出せる気配は見えてこない。そんな中悪夢に襲われたのが10日目。竜電との一番で”待った”になった後の2回目の立ち合いで脳震盪を起こし、しばらく立ち上がれなかった。その後の相撲に敗れたが、翌日から休場に追い込まれる程の負傷で痛み分けに一石を投じた格好。

東前頭10 隠岐の海 歩 島根県出身 八角部屋 5勝10敗 2点

10場所ぶりに初日から3連勝の好スタートを切ったが、波に乗り切れなかった。負けが込んでくるごとに精彩がなくなっていったが、12日目の栃煌山戦では寄り切られた後に足から崩れ落ちるなど下半身の不安さえ感じさせる負け方だった。実際10日目から6連敗を喫して、前頭2ケタ台でまさかの2ケタ負け。上位キラーだった頃が遠い昔のような弱りっぷりが心配だ。

西前頭10 貴景勝 光信 兵庫県出身 貴乃花部屋 10勝5敗 6点

初めての休場から復帰してきた場所、初日は北勝富士との若手対決を熱戦の末に制して乗っていくかと思われたが、前半戦は苦労した。しぶとく押していくのが持ち味なのに、叩きに簡単に落ちるなどどこからしくなかった。後半は押し切る相撲、土俵際で仰け反りながら残る相撲の両方とも見られるようになり、破竹の8連勝で2ケタ勝利。来場所の上位復帰に望みも…

東前頭11 大奄美 元規 鹿児島県出身 追手風部屋 4勝11敗 3点

自己最高位の今場所は序盤で北勝富士、貴景勝といった若手を破り自身の地力上昇を印象付けたかに見えたが、中盤以降さっぱり星が挙がらなくなってしまった。右四つという明確な型があるのは良いが、どちらかと言えば大人しく、若手らしい勢いはあまり感じられない。幕内に定着できるだけの地力はあるはずだが、4勝に終わって十両陥落が濃厚になってしまった。

西前頭11 千代の国 憲輝 三重県出身 九重部屋 12勝3敗 敢闘@ 8点

毎場所敢闘精神あふれる相撲で沸かせてくれる千代の国だが、ようやく期待に応えるだけの結果を残してくれた。相撲ぶりに好感が持てるのはいつも通りだったが、今場所は無理な投げを打たなかったのが白星につながった要因ではないだろうか? これまで幕内では白星が2ケタに到達することすらなかったが、12勝をマークして自身初めての三賞となる敢闘賞を受賞。

東前頭12 荒鷲 毅 モンゴル出身 峰崎部屋 7勝8敗 5点

上位で大敗を喫して番付を大幅に下げた場所だったが、序盤戦は星が伸びなかった。ひざのケガでなかなか思うような稽古ができていないようだ。それでも中盤から少しずつ挽回を開始。12日目に負け越しが決まった時には十両陥落も心配されたが、翌日から3連勝して番付の降下は最小限に留めた。上位再浮上へはまずはひざを完治が先決。もう一度上位戦が見たい。

西前頭12 朝乃山 英樹 富山県出身 高砂部屋 7勝8敗 5点

ライバルの豊山が一足早く上位挑戦を実現させたのに刺激されたのか、初日からの3連勝は内容も伴っていて今後への期待を抱かせた。しかし、場所の中盤で右足首を痛めてから相撲がおかしくなった。思うように足が出て行かなかったり、踏み込めなかったりといかにも状態が悪そうな相撲だった。12日目に勝ち越しに王手も、その後3連敗で負け越しとなってしまった。

東前頭13 石浦 将勝 鳥取県出身 宮城野部屋 6勝9敗 5点

春巡業終盤で左ひざを痛めた影響からか、中盤までは本来の気持ちの入った相撲が見られなかった。6日目に大奄美を張ってからの切り返しと流れのある相撲で破って巻き返していくかと期待されたが、その後も好転することなく11日目で9敗。十両落ちに後がなくなったところから終盤4連勝で何とか6勝。この人の個性的な相撲がまた幕内で見られそうで一安心だ。

西前頭13 碧山 亘右 ブルガリア出身 春日野部屋 8勝7敗 5点

春巡業中にひざを痛めて場所前は満足な稽古ができなかったとのこと。その影響もあってか初日から3連敗の苦しいスタートで前半戦は苦労した。しかし、中日に業師の安美錦を押し出すとそこできっかけをつかんだようで5連勝。待望の勝ち越し決定は14日目だったが、少し前までは同格だった部屋の栃ノ心が大関昇進を決めたことが刺激にならないと言えば嘘になる。

東前頭14 佐田の海 貴士 熊本出身 境川部屋 8勝7敗 6点

4場所ぶりの幕内復帰だったが、先場所に引き続き佐田の海らしい速攻が光った。十両優勝という結果を得たことで自信を取り戻したのではないか? 相撲は気持ちで多分に結果が左右される競技だということをこの人を見ているだけで思わされた。中盤で3連敗もあったが、基本的に攻める姿勢は変わらず14日目に給金直し。幼少期を過ごした準ご当所へは幕内で帰れる。

西前頭14 豪風 旭 秋田県出身 尾車部屋 6勝9敗 6点

1場所で幕内に帰ってきて、初日から2連勝の好発進。押し込まれてもベテランらしく土俵際の引き技で春日野部屋の実力者を立て続けに破った。その後は黒星が目立つ星勘定になってしまったが、滑り出しの動きの良かった相撲の方が印象深かったせいか、もっと勝っているのではないかと錯覚させられてしまった。14日目に9敗目を喫して、再度の十両陥落が濃厚だ。

東前頭15 栃煌山 雄一郎 高知県出身 春日野部屋 8勝7敗 5点

場所前は部屋の稽古で充実著しい栃ノ心に勝ち越した日もあったと聞き、ようやく復活かと思われたが、ふたを開けてみれば連敗スタート。攻め込んでは行くが土俵際での逆転が2日続いた。その後は馬力で相手を圧倒する相撲もあったが、三役に定着していた頃と比べるとまだまだ復活とは言い難かった。それでも長女が誕生してから初めての勝ち越しでやれやれだった。

西前頭15 旭大星 託也 北海道出身 友綱部屋 10勝5敗 敢闘@ 7点

かつては相撲王国と言われた北海道から26年ぶりの新入幕ということで注目を集めた。初日は妙義龍と取り直しの相撲で敗れたが、2日目には業師の安美錦に裾払いの得意手で初白星。そこを皮切りに5連勝と大きく白星を先行させた。対戦相手が旭大星の取り口をわかっていなかった面もあるだろうが、本人も気後れしていなかった。千秋楽に千代丸を破って敢闘賞受賞。

東前頭16 妙義龍 泰成 兵庫県出身 境川部屋 10勝5敗 7点

いつもは序盤戦が鬼門の妙義龍だが、今場所は新入幕の旭大星相手に取り直しの末白星発進。以前のように一気の出足というわけではないものの、前に落ちて負けたのは4日目の碧山戦だけ。取り口以上に気持ちが前向きになったようで、中盤の5連勝で早々と勝ち越しに王手。千秋楽には復調してきた元大関琴奨菊を破って、幕内では2年ぶりとなる2ケタ勝利をマーク。

西前頭16 安美錦 竜児 青森県出身 伊勢ケ濱部屋 4勝11敗 3点

自身の持つ高齢記録を塗り替えて39歳6ケ月で再入幕を果たしたが、満身創痍の身体は相撲についていってくれなかった。立ち合ってすぐの引き、叩きは相手に見透かされて一方的に土俵外に運ばれる相撲が相次いだ。5日目に初日を出して先場所同様に挽回してくれるのかと期待したが、再び連敗してしまい9日目で負け越し決定。4勝に終わって十両陥落は必至の状況。

東前頭17 錦木 徹也 岩手県出身 伊勢ノ海部屋 10勝5敗 7点

番付運に恵まれてギリギリ幕尻に踏み止まった幸運を見事に活かしてみせた。十両の土俵を覚悟していたとは思うが、幕内に残留したことで開き直れたのかも知れない。今場所は勝った相撲のほとんどで前に出ていたことが奏功した。11日目には幕内では自己最速の勝ち越しを不戦勝で決める幸運。結局白星は10番まで伸び、来場所は久々に下を気にせず相撲が取れそうだ。


注)評価は10点満点で、私個人によるものです。一般的な評価と異なる場合がありますので、悪しからずご了承願います。


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